●ユーリ・ノルシュティン作品集 →作品解説
代表作「話の話」「霧につつまれたハリネズミ」で世界的なアニメーション作家として知られるユーリ・ノルシュテインの作品集。ハリネズミをつつんだ霧、あおさぎと鶴に降りこめる雨、狼の子が食べるジャガイモの熱さを、リアリティ溢れる表現と人の心に語りかける演出でファンならずとも観るものを酔わせます。今回は短編特別上映に「おやすみなさいこどもたち」「ロシア砂糖CM」を上映。「おやすみ〜」はロシアの子供向け番組のオープニング他で制作され、ノルシュテインの愛犬がモデルでかわいい。「砂糖〜」は砂糖会社のシンボルのライオンが活躍する3部作です。まさに、ノルシュテインからの贈りものといえましょう。
《ノルシュティン作品集A》
話の話(1979)/霧につつまれたはりねずみ(1975)/狐と兔(1973)
アオサギと鶴(1974)/ケルジェネツの戦い(1971)/25日・最初の日(1968)
《ノルシュティン短編特別上映》
おやすみなさいこどもたち(1999)/ロシア砂糖のCF(1994,95)
●11月23日(土)追加上映決定(「外套」他)
●雪の女王
監督:レフ・アタマーノフ|原作:ハンス・クリスティアン・アンデルセン|1957|カラー|スタンダード|トーキー
脚本:ゲオルギー・グレブネル、レフ・アタマーノフ、ニコライ・エルドマン|美術:A・ヴィノコーロフ、I・シワルツマン
雪の女王に心を凍らされ、悲しい少年になってしまったカイを助けるため、親友の少女ゲルダがさまざまな苦難を乗り越えながら氷の宮殿を目指す。アンデルセンの作品の中でも、とりわけ人気の高いこの物語。当時のロシアアニメ界が総力を挙げて制作した伝説的作品。ヒロイン、ゲルダが様々な苦難にひるまず立ち向かう姿が描かれるこの作品は、高畑勲、宮崎駿らに影響を与えたともいわれる。
●チェブラーシカ 監督:ロマン・カチャーノフ
こぐまのようだし、おサルのようにも見えるけど、見たこともない不思議で可愛い動物、チェブラーシカ。ロシアアニメ界の巨匠ノルシュテインの先生、カチャーノフがロシアの児童文学作家ウスペンスキーを物語をアニメ化。とってもキュートで哀愁もある素敵な短編集です。
第一話『チェブラーシカこんにちわ』 第二話『ピオネールに入りたい』 第三話『チェブラーシカと怪盗おばあさん』 |
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●老人と海 アカデミー賞短編アニメーション部門受賞
監督:アレクサンドル・ペトロフ|1999|23分 ※メイキング映像を併映
ヘミングウェイのノーベル文学賞 受賞作品「老人と海」をアニメ化。4年を越える歳月をかけ、ガラスの上に指を使って描く独特な手法をコンピューターシステムが支え、まるで油絵が動いているような、ぬくもりのある映像を作りあげています。 |
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ロシア・アニメーション短編プログラム
●プログラムA
現代の語り部ナザーロフ監督の作品を中心に、“動物”が主役の作品を中心に集めたプログラム。『犬が住んでいました』は、役立たずで捨てられかけた飼い犬が、年老いた森のオオカミにたすけられ、交流を深めていく心温まる物語。『シドロフ・ヴォーヴァに愛を込めて』は、ひとり息子を世話することにすべてをかける一家が、周りの迷惑もかえりみず繰りひろげるトンチンカンな騒動。『ネコ会社』は、ネズミがわがもの顔にふるまう農家で、ネズミを仲間にしている飼いネコが、飼い主との間に繰りひろげるドタバタ喜劇。カバに歌を教えるというシュールな仕事に取り組む『歌の先生』。『ガールフレンド』はアメリカ民話を題材に、海辺に暮らす男と、その“ガールフレンド”になった魚との交流を描く。『恐竜たちの山』は、かわいい恐竜たちがつがいを作り卵を産む、心やさしいユートピア。『ツルの恩返し』は、おなじみの日本民話をソ連でアニメーション化した異色作。『愛しの青いワニ』は、ノルシュテインが監督デビュー前にアニメーターとして参加した作品のひとつ。
『犬が住んでいました。』(1982)/エドゥアルド・ナザーロフ
『シドルフ・ヴォ−ヴァに愛を込めて』(1985)/エドゥアルド・ナザーロフ ※ビデオ上映
『ネコ会社』(1990)/アレクサンドル・グリエフ ※ビデオ上映
『歌の先生』(1968)/アナトーリー・ペトロフ
『ガールフレンド』(1989)/エレーナ・ガヴリルコ
『恐竜たちの山』(1967)/ラサ・ストラウトマネ
『ツルの恩返し』(1977)/イデヤ・ガラーニナ
『愛しの青いワニ』(1966)/ワジム・クルチェフスキー
『小さなカバ』(1975)/エドゥアルド・ナザーロフ
犬が住んでいました。 |
シドルフ・ヴォ−ヴァに愛を込めて |
ネコ会社 |
歌の先生 |
恐竜たちの山 |
ツルの恩返し |
愛しの青いワニ |
小さなカバ |
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●プログラムB
ナザーロフ監督作品と、アタマーノフ監督作品を中心にすえたプログラム。『お姫さまと怪人』は、森に迷い込んだお姫さまが、怪人と出会うが、結局はお城に無事に戻ってくるというお話のふたつの解釈を通じて「やさしさ」と「残酷」の裏腹の関係を描く。『マルティンコの奇跡』は魔法のトランプを手に入れた男の物語。アタマーノフ監督は「つらぬく意志」をみごとに描いた名作『雪の女王』で知られている。ここで紹介する短編2本でも「つらぬく」行為が描かれているが、ここではむしろシュールなドライブ感をひきおこす。風が吹こうと波にもまれようと、ひたすら踊りつづける『船上のバレリーナ』。そして、周りに何が起ころうとひたすら自転車をこぎ続ける『サイクリスト』。『イワンのこうま』のイワン・イワノフ=ワノー監督の『四季』は、ノルシュテインもアニメーターとして参加している作品。小品ではあるが、いかにもロシア的な風景が展開する。『ネコとピエロ』は、サーカスのピエロとコンビを組んだネコの憂鬱の話。
『お姫さまと人喰い人』(1977)/エドゥアルド・ナザーロフ
『マルティンコの奇跡』(1987)/エドゥアルド・ナザーロフ
『船上のバレリーナ』(1969)/アタマーノフ、レフ
『ねことピエロ』(1988)/ナターシャ・ゴロワノワ
『四季』(1969)/イワン・イワノフ=ワノー ※ビデオ上映
『サイクリスト』(-)/レフ・アタマーノフ
お姫さまと怪人 |
マルティンコの奇跡 |
船上のバレリーナ |
ねことピエロ |
サイクリスト |
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●プログラムC
斬新なスタイルでソビエト・アニメーションに新展開をもたらしたヒトルーク監督の作品と、国外からの影響を受けつつ発展した80年代のアート・アニメーションのプログラム。けたたましい音にとりかこまれた都会のアパートで、ノイローゼになってゆく男の悲哀を描く『ある犯罪者の話』。『島』では、無人島に漂着した男の悲劇、あるいは喜劇。たすけを待つ男がいる無人島に、いろんな人や船や機械がやってきては、男を無視して去っていく。文明批判もからんだ作品は、観る者の心に強い印象をのこす。『ライオンと雄牛』は、誹謗中傷や嫉妬が友情をこわす悲劇を描く寓話。『ケレ』は、シベリア最東端に住むのチュコト民族の話をもとにしている。ラジオで聞いた西洋音楽を笛で吹くと、6本足の怪物が現れ、子どもたちをつかまえる。ショーリナ監督の『夢』は、死を思いながら床についている男が、自分の人生を振り返り後悔にくれる。『扉』は、アパートの正面入口が開かなくなって大騒ぎ。そのうち、みんな好き勝手に窓から出入りを始めるようになる“慣れ”の恐ろしさ。
『ある犯罪者の話』(1962)/フョードル・ヒトルーク
『島』(1973)/フョードル・ヒトルーク ※ビデオ上映
『ライオンと雄牛』(1983)/フョードル・ヒトルーク ※ビデオ上映
『ケレ』(1988)/ミハイル・アルダシン 他
『夢』(1988)/ニーナ・ショーリナ
『扉』(1986)/ニーナ・ショーリナ
●プログラムD
ヒトルーク監督作品とフルジャノフスキー監督作品を中心としたプログラム。有名な映画監督エイゼンシュテインらしき人物を主人公に、検閲や天気や役者の気まぐれと闘いながら、脚本を作り、撮影・編集をし、上映にこぎつける映画の楽しさを描く『フィルム・フィルム・フィルム』。『フレームの中の人』は、より立派な額縁(フレーム)の中に飾られることを生きがいに、立身出世をとげながら、上司の気まぐれで簡単に失脚する男の悲劇を描く。『奇妙なタンス』は、部屋に持ち込まれた巨大なタンスが、ついには部屋を飲み込んでしまう不条理。『王様のサンドウィッチ』では、「くまのプーさん」で知られるミルンの子供のための詩をもとにした作品。王様が朝食のパンにバターをのせようとすると、バターがない。バターを取り寄せるように命令をくだすが、食卓にバターが届くまでには、大変な苦労と時間がかかるのである。『スパイの情熱』は、モスクワを舞台に、ドイツらしき国のスパイを迎え撃つソ連KGBの活躍を描くスパイ映画のパロディ。お約束のマッドサイエンティストも登場する。
『フィルム・フィルム・フィルム』(1968)/フョードル・ヒトルーク
『フレームの中の人』(1966)/フョードル・ヒトルーク
『スパイの情熱』(1967)/エフィム・ガムブルグ
『奇妙なタンス』(1970)/アンドレイ・フルジャノフスキー ※ビデオ上映
『王様のサンドウィッチ』(1985)/アンドレイ・フルジャノフスキー ※ビデオ上映
フィルム・フィルム・フィルム |
フレームの中の人 |
スパイの情熱 |
奇妙なタンス |
王様のサンドウィッチ |
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