チャンバラ映画と木久扇

林家木久扇

 もし芸能の神様がいらっしゃるとしたら、私はその神に可愛がられた者だと自負する。

 戦后の小学四年生の時に父母が離婚した。母側についた長男の私は、働く少年となって、あらゆるバイトを(戦災后少年は働いていた)やって母を助けた。夏休みは映画館のアイスキャンデー売りでしのいだが、これが親父がいなくなった私への、神様との出会い。

 父性に飢えていた少年の前に、毎日でもタダで観られるチャンバラ映画があった。当時の少年の遊びは、棒きれ振るって芝居する剣劇で、野原に子供が集まってよく遊んだもの。あこがれは嵐寛寿郎の「鞍馬天狗」。天狗に助けられる杉作少年、あれは私だ! と夢中になった。

 月日がめぐって、私は落語家となり、日本テレビ「笑点」のレギュラーとなる。司会は前田武彦氏、私は解答にチャンバラ言葉を連発した。鞍馬天狗で「杉作! 日本の夜明けは近い!」 は私の造語。これがヒットして流行語にまでなった。

 するとどうだろう、テレビ各局の企画で嵐寛寿郎先生とご一緒することが出来たのである。TBS3時にあいましょうで「二人の鞍馬天狗」。モーニングジャンボ「お揃いで」。笑点が「鞍馬天狗のおじさんは」等々。

 新夫人を迎えたばかりなのにスタジオで嵐寛丈に「由美かおるはんはヨロシイな、次のヨメハンや……」等ささやかれた。

 その上芸能レポーターもこなして東映京都では片岡千恵蔵先生、市川右太衛門先生、東野英治郎先生ともお話することが出来た。

 落語家になって良かった! チャンバラ映画を観ていて良かった! 私には大勢の父がいた! と今も芸能の神様ありがとうございます感謝しております。

 チャンバラ映画、時代劇スターの皆様、永遠なれ!

7月2日(日)〜9日(日)

たつまき奉行

1959年(S34)/東映京都/カラー/95分

『たつまき奉行』写真

©東映

■監督:マキノ雅弘/原作:陣出達朗/脚本:鈴木兵吾/撮影:三木滋人/美術:鈴木孝俊/音楽:高橋半
■出演:片岡千恵蔵、東千代之介、喜多川千鶴、佐久間良子、千原しのぶ、山村聰、進藤英太郎、月形龍之介、柳永二郎

金さんの名セリフ「……思い知ったか!」が「ちったか!」と聞こえる。マキノ雅弘監督がラスト桜を散らした。ユカイだ!

謎、謎、謎。海に消えた黄金三百貫!! 御用船失踪事件を追って、江戸の名奉行が佐渡へ飛ぶ。片岡千恵蔵の十八番「遠山の金さん」シリーズの一本。

7月10日(月)〜16日(日)

水戸黄門海を渡る

1961年(S36)/大映京都/カラー/90分 ※16mm

『水戸黄門海を渡る』写真

©1961 KADOKAWA

■監督:渡辺邦男/原作:川内康範/脚本:川内康範、杜松吉/撮影:渡辺孝/美術:上里義三/音楽:福永久宏
■出演:長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、野添ひとみ、宇治みさ子、藤原礼子、林成年、佐々十郎、石黒達也、千葉敏郎

万年二枚目の長谷川一夫が黄門役でビックリ! しかも海を渡るとは? 助さん、格さんのカツライス付き大サービス。

ご存じ水戸黄門が、蝦夷の大地に渦巻く陰謀に立ち向かって胸のすく活躍をみせる。長谷川一夫は白髪、白髭の天下の副将軍とアイヌの大酋長の一人二役。

7月17日(月)〜19日(水)

影法師捕物帖

1959年(S34)/新東宝/カラー/85分 ○国立映画アーカイブ所蔵作品

『影法師捕物帖』写真

©国際放映

■監督:中川信夫/原作:寿々喜多呂九平/脚本:石川義寛、藤島二郎/撮影:西本正/美術:宮沢計次/音楽:原六朗
■出演:嵐寛寿郎、中村竜三郎、小畑絹子、北沢典子、池内淳子、高島忠夫、明智十三郎、坂東好太郎、天城竜太郎

アラカン得意の鞍馬天狗が、原作者大佛次郎の許可がとれなくて、影法師映画になってしまった……アラマア。

老中田沼意次の悪政に苦しむ江戸庶民を救うため、神出鬼没の「影法師」が暗躍する。阪妻主演『江戸怪賊伝 影法師』(1925年)のリメイク。嵐寛寿郎三百本出演記念映画!

7月20日(木)〜27日(木)

傳七捕物帖 銀蛇呪文

1957年(S32)/松竹京都/カラー/97分

『傳七捕物帖 銀蛇呪文』写真

©1957 松竹株式会社

■監督:福田晴一/原作:野村胡堂、陣出達朗、土師清二、城昌幸/脚本:安田重夫、元持栄/撮影:片岡清/美術:川村鬼世志/音楽:万城目正
■出演:高田浩吉、瑳峨三智子、福田公子、水原真知子、伊吹友木子、高野真二、伴淳三郎

私は高田浩吉作品が大好きだ。何だかんだ言われても時代劇で歌も唄ってしまう、人生なんてそんなモノえーえ!

魔笛を吹く顔なし幽霊。銀蛇が絡んだ恐怖の連続殺人。大江戸の町に次々起こる怪奇事件を、黒門町の伝七親分が解決する。高田浩吉のヒットシリーズ、初のワイド色彩。

7月28日(金)〜8月3日(木)

きさらぎ無双剣

1962年(S37)/東映京都/カラー/93分

『きさらぎ無双剣』写真

©東映

■監督:佐々木康/原作:五味康祐/脚本:結束信二/撮影:鷲尾元也/美術:吉村晟/音楽:阿部皓哉
■出演:市川右太衛門、松方弘樹、里見浩太郎、大川恵子、筑波久子、若山富三郎、近衛十四郎、高田浩吉、東千代之介

トノ(愛称)の退屈男以外のシリーズ。90才を越えて、毎朝皇居一周できたえていた麹町一番町の大スター。

将軍暗殺の大陰謀をめぐって、剣豪、義賊、名奉行、美女、妖婦が入り乱れ、賑やかに、華やかに繰り広げられるチャンバラ活劇。右太衛門はじめスター総出演。

8月4日(金)〜11日(金)

血と砂の決斗

1963年(S38)/東映京都/白黒/88分

『血と砂の決斗』写真

©東映

■監督:松田定次/脚本:村松道平/撮影:山岸長樹/美術:吉村晟/音楽:富永三郎
■出演:大友柳太朗、近衛十四郎、丘さとみ、藤原釜足、笹みゆき、河原崎長一郎、佐藤慶、三島雅夫、清村耕次、本郷秀雄、高橋とよ、戸上城太郎

大友柳太朗が、一人で“七人の侍”をやっている。対するは近衛十四郎、戦后カムバックの二大スターである。

主君に見切りをつけ城を去った大友柳太朗が、悪行三昧の野武士集団や四人の刺客たちにひとり果敢に立ち向かっていく。剣豪スター近衛十四郎との対決も見ごたえたっぷり。

8月12日(土)〜18日(金)

尻啖え孫市

1969年(S44)/大映京都/カラー/105分 ※16mm

『尻啖え孫市』写真

©1969 KADOKAWA

■監督:三隅研次/原作:司馬遼太郎/脚本:菊島隆三/撮影:宮川一夫/美術:西岡善信/音楽:佐藤勝
■出演:中村錦之助、勝新太郎、栗原小巻、本郷功次郎、中村賀津雄、南美川洋子、梓英子、志村喬、内藤武敏、しめぎしがこ

大映に東映の中村錦之助が出る! しかも共演はカツシン、どうなるだろう? これは観なくてはと大入りのワナ。

織田信長の天下統一に「待った!」をかけた男。日本最強の鉄砲集団を率いた雑賀孫市の型破りな半生を描いた大型時代劇。原作は司馬遼太郎の同名小説。

8月19日(土)〜26日(土)

子連れ狼 冥府魔道

1973年(S48)/勝プロダクション/カラー/89分

『子連れ狼 冥府魔道』写真

©TOHO CO., LTD.

■監督:三隅研次/原作:小池一雄、小島剛夕/脚本:小池一雄、中村努/撮影:森田富士郎/美術:下石坂成典/音楽:桜井英顕
■出演:若山富三郎、富川晶宏、安田道代、山城新伍、佐藤友美、山内明、大木実、岡田英次

原作者小池一夫師に、拝一刀は天知茂ですよと言うと「仕方ないよ訪れてスグ、家の庭でトンボきる若山だもの」

残酷描写満載のアクション時代劇第五作。藩存亡にかかわる密書をめぐって、おなじみ「子連れ狼」と柳生の戦いは熾烈を極める。城内に血の雨を降らせるクライマックス!

■料金(当日)

一般…1,300円 / シニア・学生…1,100円 / 会員…900円
※水曜サービスデー…1,100円均一

■インフォメーション

  • 各回定員入れ替え制
  • 午前10時より当日の全回分の整理番号付き入場券を発売します。定員48名になり次第、締め切らせていただきます。
  • 混雑状況により、販売開始時刻を早める場合がございます。
  • 上映開始後10分を過ぎてのご入場はお断りさせていただきます。
  • 作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合がございます。あらかじめご了承下さい。

協力:東映株式会社、株式会社KADOKAWA、東宝株式会社、松竹株式会社、国際放映株式会社、国立映画アーカイブ