女性映画の名手 井手俊郎は、『青い山脈』で青春物の、『三等重役』でサラリーマン物の、『めし』でホームドラマの原型を作った東宝の看板脚本家だ。
が、一見明るく楽しい東宝映画と思わせて、実は塩コショーが利いたスパイシーな作品が多い。
小説の脚色を手がけて、原作より面白い作品もある。しかもいくつかの変名を使って、他社の作品も執筆、そちらにも数々の傑作・好篇を残す。この油断ならぬ、多彩で軽妙洒脱な都会派のおじさまの映画群をお楽しみあれ!
text by 北里宇一郎(脚本家)
協力:東宝株式会社、日活株式会社、松竹株式会社、東京国立近代美術館フィルムセンター