案内してもらった、通夜の会場は、早すぎた為、まだ焼香の準備も出来ていなかった。しかし、対面
させてもらったミンクは、生き生きと血色が良く、まるで昼寝でもしていた途中を起こされた少年のようであった。
其れで良いんだよ、曹長、
これが、映画『独立愚連隊』となると、「な、イキな曹長さんよ」とこうなるのだが、テレビ『水戸黄門』となると、「風車の弥七」となるのだそうだ。
ミンクとの出会いは『独立愚連隊』の時だった。体もデカく、態度もデカく、生意気だった。ただ、その笑顔は少年のようでスタッフには愛されていた。そんな彼をイメージしながら書いた『独立愚連隊西へ』の時を思い出す、其れは、ラストシーンだった。
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アヒルの首に縄を結び、共に広い大地に消えて行く、画面いっぱいに、アヒルのゆれるお尻のアップから始まり、不敵な笑顔で、ヒョウヒョウと懸命に歩く一人と一匹が、地平線の彼方に消えて行く、とこんなイメージのコンテが、ロケ当日の嵐のような天候で実現できず、シブシブと引き上げたことがあった。
ミンク、あの頃のロケ地御殿場は、果てしなく続く荒野で、自然が一杯だったな。
斎場を出た。強い風と激しい雨が降っていた。さしかけて貰ったビニール傘が悲鳴をあげる。
「やらずの雨」とは、こう言う事であろうか?
2004.5.25 岡本喜八
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