10月6日(土)〜12日(金)
トルコ110番 悶絶くらげ
1978年(S53)/にっかつ/カラー/71分
■監督:近藤幸彦/脚本:荒井晴彦/原作:木谷恭介/撮影:畠中照夫/美術:坂口武玄
■出演:原悦子、吉沢由起、片桐夕子、星野暁一、藤野弘、益富信孝、影山英俊、千葉繁、玉井謙介、小見山玉樹
『新宿乱れ街 いくまで待って』77に続く荒井晴彦のロマンポルノ脚本第2作。これも前作に負けず劣らずの青春へのこだわりが漂う。学生運動に敗れトルコ街で軽佻浮薄に生きる男が、もう一度だけ奮う匹夫の勇を、切ない思いをこめて描き出す。高倉健の「唐獅子牡丹」が巧妙に使われている。
10月13日(土)〜19日(金)
黒い下着の女
1982年(S57)/にっかつ/カラー/68分
■監督:斉藤信幸/脚本:いどあきお/撮影:山崎善弘/美術:渡辺平八郎/音楽:甲斐八郎
■出演:倉吉朝子、小川亜佐美、山口千枝、吉川遊土、佐竹一男、上野淳、錆堂連、草薙良一
斉藤信幸監督本領発揮の1作。なりゆき任せで行動するヒロイン倉吉朝子に、圧倒的な存在感を付与してみせた。鋭い、挑むような眼。ふてぶてしささえ感じさせる物憂い雰囲気。それでいて強い意思を秘めた表情…黒い下着がよく似合う。彼女のさすらう魂が、風景の中にくっきり表れる。
10月20日(土)〜26日(金)
暴行儀式
1980年(S55)/にっかつ/カラー/69分
■監督:根岸吉太郎/脚本:荒井晴彦/撮影:前田米造/美術:渡辺平八郎
■出演:紗貴めぐみ、水島美奈子、山崎義治、佐瀬陽一、野沢晶則、羽田典夫、麻吹淳子、幸田ちあき、石田純、堀勉
翌年『遠雷』81で華々しく売り出す荒井晴彦脚本・根岸吉太郎監督コンビが最初に組んだ作品。暴走族封じの道路交通法改正を背景に、「遅れてきた暴走族」たちの焦燥が巧みに表され、女性よりも、むしろ少年たちの生態がみずみずしく描かれる。石田純一が元暴走族リーダー役で出演している。
10月27日(土)〜11月2日(金)
縄と乳房
1983年(S58)/にっかつ/カラー/69分
■監督:小沼勝/脚本:宇治英三/原案:小寺朝/撮影:野田悌男/美術:木村威夫/音楽:甲斐八郎
■出演:松川ナミ、田山涼成、仙波和之、志麻いづみ、高橋明、庄司三郎、佐川泉、高林陽一
桂千穂(ここでは「宇治英三」名義)脚本・小沼勝監督の練達コンビによるSM映画の名作。京都ロケを敢行し、情緒ある景色の中でSMショーを業とする男女の情愛をじっくりと見せる。『奴隷契約書』シリーズで大胆なS女ぶりを晒した松川ナミが田山涼成との顔合わせで新境地を拓いた。
11月3日(土)〜9日(金)
朝はダメよ!
1980年(S55)/にっかつ/カラー/69分
■監督:根岸吉太郎/脚本:竹山洋/原作:丸山賀世子/撮影:鈴木耕一/美術:川船夏夫/音楽:三枝成章
■出演:鹿沼えり、江崎和代、大崎裕子、小松方正、堀礼文、北見敏之、市村博、村尾幸三、庄司三郎
わたしの80年度日本映画ベストワン。根岸吉太郎監督が軽妙な喜劇タッチで当時の都会OL風俗を描いている。発売されたばかりのウォークマンや人気漫画「ガラスの仮面」をうまく使って、鹿沼えり演じるヒロインの心象を浮き彫りにした。30年余り前の時代感覚を楽しんでほしい。音楽・三枝成章にも注目。
11月10日(土)〜16日(金)
宇能鴻一郎の濡れて打つ
1984年(S59)/にっかつ/カラー/55分
■監督:金子修介/脚本:木村智美/原作:宇能鴻一郎/撮影:杉本一海/美術:斉藤岩男
■出演:山本奈津子、林亜里沙、沢田情児、原田悟、石井里花、高山成夫
平成『ガメラ』シリーズの金子修介監督、弱冠28歳でのデビュー作。当時23歳の木村智美脚本と組み、女性の独白文体で知られる宇能鴻一郎原作を、なんと人気テニス漫画「エースをねらえ!」の世界にワープさせてしまっている。熱烈漫画ファンでもあった金子ならではの奇想天外なアイデアに爆笑必至。
11月17日(土)〜23日(金)
犯され志願
1982年(S57)/にっかつ/カラー/68分
■監督:中原俊/脚本:三井優/撮影:前田米造/美術:後藤修孝/音楽:林大輔
■出演:有明祥子、夏麗子、風祭ゆき、鬼丸善光、宇南山宏、小池雄介、木下隆康、木瓜みらい
わたしの82年度日本映画ベストワン。『櫻の園』90で知られる中原俊監督のデビュー作である。インテリアデザイナーという「カタカナ職業」で自立するバブル前夜80年代初めのキャリアウーマンの生活感や心理、生理を細やかに追いかけて、さながら一篇のコクのある恋愛小説に仕上げた。
11月24日(土)〜30日(金)
ピンクのカーテン2
1982年(S57)/にっかつ/カラー/70分
■監督:上垣保朗/脚本:高田純/原作:ジョージ秋山/撮影:野田悌男/美術:菊川芳江/音楽:原マスミ
■出演:美保純、阿部雅彦、萩尾なおみ、望月太郎、酒井昭、麻生うさぎ、吉川敏夫、芦沢洋三、小見山玉樹
奔放な魅力の美保純が妹、『天使のはらわた 赤い淫画』81でデビューした80年代を代表するロマンポルノ男優阿部雅彦が兄。一歩間違えれば近親相姦になりそうな危うい兄妹関係を、上垣保朗監督がぎりぎりのバランスで描き取る人気シリーズ第2作。当時旬のヒット作の勢いをご覧あれ。
12月1日(土)〜7日(金)
不純な関係
1984年(S59)/にっかつ/カラー/72分
■監督:西村昭五郎/脚本:斎藤博/撮影:山崎善弘/美術:渡辺平八郎/音楽:大野克夫
■出演:中村亜湖、山本奈津子、江崎和代、酒井昭、丘ナオミ、伊藤昌一、草薙良一、白山英雄、石塚忠吉、中尾和子
斎藤博という脚本家がいた。徹頭徹尾、男女の三角関係にこだわり続けた作家だ。幾多の佳作を残して94年、42歳の若さで急逝したのが惜しまれてならない。その原点とも言えるのがこの作品。兄貴分である荒井晴彦の『新宿乱れ街 いくまで待って』に相当する私小説ならぬ「私脚本」である。
12月8日(土)〜14日(金)
ダブルベッド
1983年(S58)/にっかつ/カラー/102分
■監督:藤田敏八/脚本:荒井晴彦/原作:中山千夏/撮影:安藤庄平/美術:佐谷晃能/音楽:宇崎竜童
■出演:大谷直子、石田えり、柄本明、岸部一徳、高橋ひとみ、緋多景子、石岡啓一郎、赤座美代子、鈴木清順、吉行和子
神代辰巳監督とのコンビが多い荒井晴彦がロマンポルノで唯一藤田敏八監督と組んだ、豪華キャストによる愛憎劇。柄本明、岸部一徳の男同士の感情の機微が荒井脚本の妙なら、全編を漂う独特の空間感覚は藤田演出ならではの浮遊感か。重みのあるドラマの味わいを堪能できること請け合いだ。
12月15日(土)〜21日(金)
赤い縄 果てるまで
1987年(S62)/にっかつ撮影所/カラー/68分
■監督:すずきじゅんいち/脚本・原作:石井隆/撮影:水野尾信正/美術:和田洋/音楽:津田治彦
■出演:岸加奈子、阿部雅彦、中川みず穂、林里奈、武川信介、三田寛之、木内玲子
ロマンポルノにおけるSM官能映画わたしのベストワン。『天使のはらわた』シリーズの石井隆脚本とすずきじゅんいち監督のコンビは、女・岸加奈子、男・阿部雅彦が共に堕ちていく心の闇の淵を静かに抉り出してみせる。ゾクゾクするような科白や振る舞いの数々に、いつしか酔わされてしまう。
【トークイベント】
- 10月6日(土) 21:10
『トルコ110番 悶絶くらげ』上映後
ゲスト:荒井晴彦さん、吉沢由起さん - 11月3日(土) 21:10
『朝はダメよ!』上映後
ゲスト:根岸吉太郎監督 - 11月10日(土) 21:00
『宇能鴻一郎の濡れて打つ』上映後
ゲスト:金子修介監督 - 11月17日(土) 21:00
『犯され志願』上映後
ゲスト:中原俊監督 - 追加決定!
12月15日(土) 21:00
『赤い縄 果てるまで』上映後
ゲスト:すずきじゅんいち監督 - 12月21日(金) 21:00
『赤い縄 果てるまで』上映後
ゲスト:成田尚哉さん、山田耕大さん(プロデューサー)
※他、ゲスト調整中です。決まり次第、当館HPにてお知らせします。
■料金(当日)
一般…1,200円
シニア・学生…1,000円
会員…800円
水曜サービスデー…1,000円均一
■インフォメーション
- ●午前10時15分より当日全回分の整理番号付き入場券を発売いたします。定員48名。
- ●上映開始後10分を過ぎてのご入場はお断りさせていただきます。
- ●作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合がございます。あらかじめご了承下さい。
【書籍】
『ロマンポルノの時代』 寺脇研
光文社新書/定価998円(税込)
終焉後、四半世紀近く経った今も、人々の記憶に強く残り続ける「日活ロマンポルノ」。 誕生から40年、映画評論家として深く関わってきた著者が、作品を総括。 女優のみならず脚本家、プロデューサー、男優、忘れられがちな80年代の名作にも目を向ける。