4月19日(土)〜28日(月)

マル秘極楽紅弁天ニュープリント

1973年(S48)/日活/カラー/70分

『マル秘極楽紅弁天』写真

©日活

■監督:曽根中生/脚本:田中陽造/撮影:森勝/美術:渡辺平八郎/音楽:月見里太一
■出演:片桐夕子、芹明香、薊千露、山本涼、長弘、丹古母鬼馬二、織田俊彦、橘田良江、吉野あい、小森道子

デビューこそ東映だが、芹明香といえば日活ロマンポルノであり、その記念すべき出演第一作。江戸の貧民街で暮らすフーテン娘で、すでに芹らしいアンニュイなセリフ回しは完成形。しかし曽根中生監督いわく「片桐夕子と一緒に、脱ぐのがイヤだとスタジオから逃げて、二人で肩を抱き合って泣いていた」そう。本作のふてぶてしい、芹の自由奔放さからは意外に思える純情な逸話。底辺で暮らす人々の自由なバイタリティに魅了される一作。

4月29日(火)〜5月9日(金)

狂棲時代ニュープリント

1973年(S48)/日活/カラー/69分

『狂棲時代』写真

©日活

■監督:白鳥信一/脚本:いどあきお/撮影:前田米造/美術:川崎軍二/音楽:月見里太一
■出演:風間杜夫、山科ゆり、司美智子、絵沢萠子、芹明香、長弘、堺美紀子、清水国雄、しまさより、加納愛子、相川圭子

予備校生の公平(風間杜夫)は母と二人暮し。鬱屈がつのる彼はガールフレンドの典子(山科)にセックスを要求して拒まれ、声をかけてきたホステスともうまく果たせず、思わず公園で野宿していた家出少女(芹)を強姦してしまう。脚本家のいどあきおは、その後いどと芹にとっての代表作となる『㊙色情めす市場』を執筆する。彼の葬儀の際、芹はいどの妻と目が合った瞬間、電流が走ったように心が通じ、お互い無言で涙を零し始めたという。

5月10日(土)〜16日(金)

濡れた欲情 特出し21人

1974年(S49)/日活/カラー/77分

『濡れた欲情 特出し21人』写真

©日活

■監督・脚本:神代辰巳/脚本:鴨田好史/撮影:姫田真佐久/美術:渡辺平八郎/音楽:世田のぼる
■出演:片桐夕子、芹明香、絵沢萠子、古川義範、外波山文明、高橋明、粟津號、吉野あい、宝由加里、東八千代

神代辰巳が模索し怪作を連打する中で、自信を持って己のスタイルを確立したのが本作ではないかと思う。そして神代といえば歌謡映画であり、本作で芹が歌うは梶芽衣子の『怨み節』。同じヒモに操られる片桐夕子とのレズ的な三角関係。しかしそれも続くわけではなく、全員ひたすら鼻歌を口ずさみ、三人とも流れ流れてとりあえず映画に「終」の文字は出るが、まさに切り取られた人生同様なんら終わっちゃいない。映画に終幕なんて必要ない!

5月17日(土)〜23日(金)

四畳半襖の裏張り しのび肌

1974年(S49)/日活/カラー/81分

『四畳半襖の裏張り しのび肌』写真

©日活

■監督:神代辰巳/脚本:中島丈博/撮影:姫田真佐久/美術:土屋伊豆夫
■出演:宮下順子、丘奈保美、芹明香、絵沢萠子、江角英明、吉野あい、中沢洋、高橋明、花上晃

昭和初期の芸者置屋を舞台に、網の目のようにもつれる男女関係を描く。正太郎はおかみ花清(宮下)の息子だが、小さい頃から芸者と同じ部屋で寝起きしていたためか早熟に。店の者全員と寝た挙句、預けられた映画館でも経営者夫婦をトリコにしてしまう。芹は芸者小ふく役。正太郎の子を身ごもったため、よりによって花清の旦那に水揚げしてもらう、したたかだが諦観の果てに澄んだ笑みのある娘。「男と女にゃあれしかないよ、バンザイ」。

5月24日(土)〜30日(金)

赤線玉の井 ぬけられます

1974年(S49)/日活/カラー/78分

『赤線玉の井 ぬけられます』写真

©日活

■監督・脚本:神代辰巳/原作:清水一行/撮影:姫田真佐久/美術:横尾嘉良
■出演:宮下順子、丘奈保美、芹明香、中島葵、絵沢萠子、吉野あい、殿山泰司、江角英明、蟹江敬三、益富信孝、前野霜一郎、高橋明

売春防止法の施行が目前に迫った赤線地帯の特飲店「小福」。その新春の一日を過ごす娼婦たちを捉えた群像劇。やくざに惚れこんだ女、一日で客を取った数の新記録を樹立しようと思い立つ女、ずっと情夫も足抜けもできない孤独な女……。芹明香が演じるのは水揚げされて結婚したが、夫とのセックスでは満足できない公子。「小福」へふらりと舞い戻る、紫と黄色のワンピースを着た芹明香の、結髪で映える瓜実顔。昭和モダンな佇まいが絶品。

5月31日(土)〜6月6日(金)

マル秘色情めす市場

1974年(S49)/日活/パートカラー/83分

『マル秘色情めす市場』写真

©日活

■監督:田中登/脚本:いどあきお/撮影:安藤庄平/美術:川崎軍二/音楽:樋口康雄
■出演:芹明香、花柳幻舟、宮下順子、絵沢萠子、萩原朔美、岡本章、夢村四郎、坂本長利、高橋明、小泉郁之助、榎木兵衛

芹明香、女優人生における代表作。大阪の西成に暮らす娼婦トメは、母親(花柳)との軋轢や、地元の売春を仕切るやくざの脅しに屈することなく、一人で西成という土地を生き抜いていく。実際にあいりん地区でカメラを回しドキュメントタッチで撮られ、荒んだ特殊な土地の空気を写し取った、田中登監督渾身の作品。芹はほっそりした肢体でふわふわと、寄せ場の不穏さの中に溶け込んで漂うように歩く。芹自身、生涯の一作と自負する傑作。

6月7日(土)〜13日(金)

仁義の墓場

1975年(S50)/東映東京/カラー/94分

『仁義の墓場』写真

©東映

■監督:深作欣二/原作:藤田五郎/脚本:鴨井達比古、松田寛夫、神波史男/撮影:仲沢半次郎/美術:桑名忠之/音楽:津島利章
■出演:渡哲也、梅宮辰夫、多岐川裕美、安藤昇、ハナ肇、成田三樹夫、田中邦衛、芹明香

田中登監督の『㊙色情めす市場』が映画界に与えた衝撃は大きかった。東映の深作欣二は本作を見た後、一升瓶を持って田中の元を訪れたという。そしてその後撮られたのが本作。実在の破滅的に生きたやくざ石川力夫を、渡哲也が病み明けの凄惨さで演じきった、実録やくざ映画の極北。芹は釜が崎に流れついた渡にヘロインを教える娼婦役。『㊙色情めす市場』の儚い姿の奥に秘めた生命力とは真逆の、ぞっとするほど静謐なセピア色の地獄絵図。

6月14日(土)〜20日(金)

赤線本牧チャブヤの女

1975年(S50)/日活/カラー/69分

『赤線本牧チャブヤの女』写真

©日活

■監督:白鳥信一/脚本:佐治乾/撮影:畠中照夫/美術:大村武/音楽:穂口雄右
■出演:ひろみ麻耶、片桐夕子、二条朱実、芹明香、山科ゆり、絵沢萠子、信太且久、あべ聖、坂本長利、小泉郁之助

昭和十一年、横浜の特飲街にある太陽ホテルに売られてきたアキ(ひろみ)は、徐々に女として磨きをかけられ、床上手の売れっ子となっていく。チャブヤと呼ばれる本牧の娼館を舞台にした群像劇。白鳥信一監督が『赤線最後の日 昭和33年3月31日』('74)に続いて、二・二六事件も背景におきながら、時代に翻弄される娼婦たちの運命を愛惜とともに描く。芹はアキに、感じているように見せる演技のテクニックを披露する娼婦、照子役。

6月21日(土)〜27日(金)

濡れた欲情 ひらけ!チューリップ

1975年(S50)/日活/カラー/76分

『濡れた欲情 ひらけ!チューリップ』写真

©日活

■監督・脚本:神代辰巳/脚本:岸田理生/撮影:前田米造/美術:徳田博/音楽:山本正之
■出演:芹明香、石井まさみ、安達清康、谷ナオミ、二条朱実、丘奈保美、奈良あけみ、松井康子、浜村純、江角英明、小松方正、高橋明、間寛平

舞台は大阪。駆け出しのパチプロ洋は、ライバルであるクギ師の明にパチンコ勝負で十連敗中。しかしこの世のバランスなのか、童貞から脱することのできない明の惚れた女性、牧子(芹)は洋にぞっこん。神代辰巳の映画は鈴木晄による編集と、登場人物たちの無駄な運動性が凄まじい。ラーメン屋台を引いて、ワンカット長回しで走り続ける場面の躍動感は必見。元スケバンという設定の芹のカミソリさばきと、胸に迫る仁義の切り方を見よ!

6月28日(土)〜7月4日(金)

札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥

1975年(S50)/東映京都/カラー/82分

『札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』写真

©東映

■監督・脚本:関本郁夫/脚本:猪又憲吾/撮影:中島徹/音楽:荒木一郎
■出演:芹明香、東龍明
■ナレーター:山城新伍

トルコにまつわるドキュメントと、全国津々浦々の店を流れていくトルコ嬢ひろみ(芹)と、ヒモの利夫(東龍明)のドラマ。実際の移動中や撮影の合間にカメラを回して撮った、芹明香の素顔の可愛らしさ。映画でいつも求められる頽廃とは違う、屈託のない笑顔に目を奪われる。ヒモとの腐れ縁、雪の中でショールを巻いて歩く竹久夢二の絵から抜け出てきたような美しさ、そして彼女の十八番な放尿シーンなど、あらゆる芹明香の詰め合わせ。

7月5日(土)〜11日(金)

喜劇 特出しヒモ天国

1975年(S50)/東映京都/カラー/78分

『喜劇 特出しヒモ天国』写真

©東映

■監督:森﨑東/原作:林征二/脚本:山本英明、松本功/撮影:古谷伸/美術:吉村晟/音楽:広瀬健次郎
■出演:山城新伍、池玲子、芹明香、カルーセル麻紀、川地民夫、川谷拓三、絵沢萠子、森崎由紀、殿山泰司、藤原釜足

近年再評価が高まる森﨑東が、東映へ招聘され制作した傑作!ストリッパーとヒモたちの悲喜こもごもを、怒涛の如く描いた群像劇。芹明香はアル中の浮浪者だったところを拾われ、ストリッパーとなったローズを演じる。彼女のせいで堅物刑事からヒモに淪落する、川谷拓三との掛け合いが楽しい。芹はけだるい喋り方のまま破天荒な面白キャラとなり、東映の大輪の花・池玲子さえ凌駕する存在感を放つ。生死の火花と哀歓がほとばしる祝祭的作品。

text by 真魚八重子(映画評論家)

■料金

一般/1,200円 シニア・学生/1,000円 会員/800円 水曜サービスデー/1,000円均一

■インフォメーション

  • 各回定員入れ替え制
  • 午前10時15分より当日の全回分の整理番号付き入場券を発売します。定員48名になり次第、締め切らせていただきます。
  • 上映開始後10分を過ぎてのご入場はお断りさせていただきます。
  • 作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合がございます。あらかじめご了承下さい。