1973年／日活／カラー／77分
■脚本：田中陽造／撮影：高村倉太郎／美術：川崎軍二／音楽：月見里太一 　■出演：中川梨絵、山科ゆり、あべ聖、薊千露、絵沢萠子、堂下繁、高橋明

百文女郎、死神おせんの苦界に居直って生きる姿を活写した名作。田中陽造の絶妙な脚本、高村倉太郎（キャメラ）、熊谷秀夫（照明）の名人芸が奇跡のように融合し、黒子を使っておせんが人形振りで踊る名場面の様式美は語り草になっている。

1978年／にっかつ／カラー／94分
■原作：井原西鶴／脚本：いどあきお／撮影：森勝／美術：柳生一夫 　■出演：宮井えりな、山口美也子、青山恭子、松田暎子、山下洵一郎

井原西鶴の古典をベースに、ピンクサロンで働く女たちがマイクロバスで道行きをはかるロードムービー。心中行なのに悲壮感は微塵もなく、旅の途中で彼女たちが一斉に放尿する場面、バスの上でゴーゴーを踊る山口美也子が際立って印象に残る。

1975年／日活／カラー／76分
■脚本：いどあきお／撮影：森勝／美術：川崎軍二／音楽：坂田晃一 　■出演：宮下順子、江角英明、坂本長利、橘田良江、水木京一、五條博、花柳幻舟

昭和史を彩る最大の猟奇事件を素材に、性愛に殉じた女の愉悦と哀しみを表出させたロマンポルノ史上屈指の傑作。「外の光が邪魔なのよ」と呟き、二・二六事件で騒然とする世相に背を向けて、密室で性戯に耽溺するヒロインは聖性すら感じさせる。

1972年／日活／カラー／71分
■脚本：宮下教雄／撮影：山崎善弘／美術：川崎軍二／音楽：坂田晃一 　■出演：田中真理、続圭子、桂知子、丹古母鬼馬二、雪丘恵介、織田俊彦、影山英俊

裕福な考古学者の家庭がゆるやかに崩壊するさまを耽美的なタッチで描いた秀作。秘密を抱える美人姉妹が近親姦めいた官能遊戯に興じる場面はバディムの『血とバラ』を想起させる。全篇に極彩色が乱舞し、田中登の華麗な映像実験が全開。

1976年／日活／カラー／76分
■原作：江戸川乱歩／脚本：いどあきお／撮影：森勝／美術：菊川芳江／音楽：蓼科二郎 　■出演：宮下順子、石橋蓮司、渡辺とく子、夢村四郎、中島葵、長弘、織田俊彦

天井の節穴から男女の秘事を覗く性癖を持つ主人公を狂言回しに、大正末期の浅草のデカダンスな気分を横溢させた佳品。パラソルを持つ好色な貴婦人、ピエロ、小人、花屋敷と乱歩好みの畸形趣味がスケッチされ、カラフルな白昼夢のようだ。

1973年／日活／カラー／73分
■脚本：阿部真理／撮影：森勝／美術：川崎軍二　■出演：市川亜矢子、梢ひとみ、風間杜夫、鶴岡修、高山千草、島村謙次

教え子と同棲する女教師の飽くなき性への執着を、大胆な性描写を通じて鮮烈に浮かびあがらせた問題作。公園での花弁が舞う中での奔放なセックス、風船、模型飛行機などのオブジェが印象的。高校生に扮した風間杜夫の繊細な演技が忘れ難い。

1978年／日活／カラー／96分
■原作：長部日出雄／脚本：佐治乾／撮影：森勝／美術：柳生一夫／音楽：石間秀機、篠原信彦 　■出演：室田日出男、黒沢のり子、志方亜紀子、古尾谷康雅、絵沢萠子

東京近郊の水辺が広がる田園地帯。三人の青年に輪姦された人妻がショック死するという凄惨な悲劇の行方を詩的ドキュメンタリーのような眼差しでとらえた傑作。物言わぬ裸身の妻を湯船で浄め、慈しむ夫・室田日出男の寡黙な名演が素晴らしい。

1974年／日活／パートカラー／83分
■脚本：いどあきお／撮影：安藤庄平／美術：川崎軍二／音楽：樋口康雄 　■出演：芹明香、花柳幻舟、夢村四郎、宮下順子、萩原朔美、高橋明、絵沢萠子

大阪のドヤ街でしたたかに生きる娼婦トメを描いた田中登版『にっぽん昆虫記』。沈んだ虚無的なまでに美しいモノクロ映像が鮮烈だ。倦怠感を漂わせるトメが精薄の弟と交わるシーンでは慈愛に満ちた母性が一気に噴出し、深い感銘を与える。