ラピュタアニメーションフェスティバル2005 トップページへ

ユーリー・ノルシュテイン/アニメーションをつくるという事 10日間連続ワークショップ

ユーリー・ノルシュテインからのメッセージ

「アニメーション作家を志す者に必要なこと」ユーリー・ノルシュテイン

 アニメーション作家を志すならば、快適な生活から抜け出して、賢い心あふれる精神生活を送らなければいけません。そのためには読書することが必要です。しかし今はみんな読書していない、勉強していません。勉強しない人は芸術家にはなれません。アニメーションをつくる人・何者かになりたい人は努力しなくてはなりません。芸術家になるには世界を知らなくてはならない、人々の先頭をいかなくてはならない、普通の人がみえないものをみなくてはならない、それだけの努力が必要です。では、どこからその源泉をもってくるのか。そのときに役立つのが読書なのです。

 もちろんアニメーションの技術も欠かせないものですが、それだけではどうしようもありません。それだけでは単に形式主義になる以外にないのです。昔のモスクワ国立映画大学では、文学・絵画・音楽など様々な分野の授業がありました。そして、その全てが作品をつくるときに役立つのです。芸術作品には様々なものが集約されます。アニメーションをつくるには技術だけではなく、多くのものが必要なのです。

 私がイギリスでワークショップを行った時、最初は誰も自分で何かをつくりあげることができない状態でした。そこですぐに美術館にいくように指示して、どの部屋の何の作品をみるのか課題を与えました。そしてその後に質疑応答し、次はそれをテーマにしてものをつくったのです。私はものすごい質問と要求で生徒を苦しめました。人物が登場すると、この歩き方は、この人の両親は何をしているのか、兄弟はいるのか、どんな家に住んでいるのか、何が好きか、今日は何を食べのたかと聞きました。どんどん質問していくと、生徒は歯ぎしりして苦しみましたが、四日目からはどんどん考え答えました。作品に登場するキャラクターを、その背景からどういう人物なのか自分でつくり上げていったのです。

 作品をつくるには、まず周辺を非常に注意深く観察することです。自分が目にしたもの・考えたこと・出会った人、様々なものについて語らなければなりません。そしてそれを絵にする、自分で考えて物語をつくるのです。それは紙の上、頭の中だけでもできます。題材や勉強する材料はいくらでもあります。そうやって自分を鍛練していくことが必要です。毎日それを続けていけば、とても理知的な世界に入り込むことができます。すると本人たちも気づかないうちに、半年過ぎた頃はとても自由に絵コンテがかけるようになるでしょう。アニメーションをつくる事とは、こうした日々の努力・勉強の積み重ねなのです。

ワークショップ受講生募集要項