ゆきてかえらぬ 渡辺護 官能の映画旅

■ 作品解説 /

※併映作品はすべてDVD上映です。

7月23日(土)〜25日(月)

あばずれ

1965年(S40)/扇映画/白黒/60分 ※16mm短縮版

『あばずれ』写真

■脚本:吉田貴彰(吉田義昭)/撮影:生田洋(竹野治夫)
■出演:飛鳥公子、左京未知子、黒木純一郎、千田啓介

父を死に追いやり、すべてを奪ったあの女が憎い!17才の立子は義母の文枝と愛人の早田に復讐する。少年の頃に見て感激した衣笠貞之助『雪之丞変化』のような映画を撮りたいという思いに溢れた監督デビュー作。「今見たら下手くそだと思うんだよね、演出が。でも、一カットずつ真剣にこだわって撮っている」。フィルムは現存しないと思われたが、二年前に神戸映画資料館が16mmプリントを発見。東日本初上映!

7月26日(火)〜8月1日(月)

紅壺(復元版)

1965年(S40)/扇映画/白黒/78分 ※Blu-ray

『紅壺(復元版)』写真

■脚本:吉田貴彰(吉田義昭)/撮影:大森一郎(門口友也)
■出演:真山ひとみ、原あけみ、黒木純一郎、千田啓介

上京したヒロコは言い寄る男たちを利用してトップモデルを目指す。渡辺は主演の真山ひとみに一目惚れ。映画を撮る歓びに恋する歓びが加わった初々しい作品。「監督としちゃあさ、二本目でね、なんか生き生きとしていたんだよ。本当にバカだねえ」。だが、雑踏の中を行く主演女優をとらえたカメラはまさにヌーヴェルヴァーグ!発見された脚本をもとに正しい順番にいくつかのシーンを並べ替えた復元版を上映。

★「渡辺護が語る自作解説 新人女優を撮る」併映

8月2日(火)〜8日(月)

女子大生の抵抗

1966年(S41)/扇映画/白黒/70分 ※16mm

『女子大生の抵抗』写真

■脚本:奈加圭司(石森史郎)/撮影:船橋登(遠藤精一)
■出演:谷口朱里、野上正義、可能かづ子、林美樹

『肉体の悪魔』の翻案。鎌倉を舞台に人妻と青年の悲恋が描かれる。公開当時、大和屋竺が「渡辺さん、やりましたね」と絶賛し、評論家の村井実が「これだけベッドシーンを撮れる監督はいない」と評価したが、今回の上映では、50年代から数多く作られた文芸メロドラマのピンク映画への転用の成功例として見直してみたい作品。「女子大生の抵抗?何でこんなタイトルになったんだ?そんな話じゃないだろ」

★「渡辺護が語るピンク映画史(補足)すべて消えゆく ピンク映画1964-1968」併映

渡辺護自伝的ドキュメンタリー
第一部「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」

2012年(H24)/カラー/全篇122分 ※DVD

■監督:井川耕一郎/撮影:松本岳大/録音:光地拓郎/製作・編集:北岡稔美 ■出演:渡辺護

8月9日(火)〜15日(月)

前篇

60分

『渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第一部「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」前篇』写真

渡辺護自伝的ドキュメンタリー(全十部)の第一部の前篇で渡辺が主に語るのは少年時代。生まれ育った王子の町の人々、学校をさぼって見た映画、空襲、そして敗戦。饒舌な渡辺がふいに黙ってしまうのは、若くして亡くなった憧れの兄・優について語った直後。「生きてたらすごいと思うよ、うちの兄貴はきっと……」。映画や演劇を愛した兄の思いを受け継ぐように、渡辺は映画の世界へと向かっていくことになる。

8月16日(火)〜22日(月)

後篇

62分

『渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第一部「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」後篇』写真

第一部の後篇で渡辺が語るのは監督としてデビューするまで。演劇青年からTVドラマの役者へ。そして教育映画の助監督になり、ピンク映画の世界へ。デビュー作『あばずれ』について詳しく語る渡辺。だが、彼の語る『あばずれ』は死後に発見された『あばずれ』と異なる部分がある。おれならこう撮ると考える監督らしい癖が記憶を変形させたのか。死ぬまで現役であり続けようとした執念が静かに燃えている。

8月23日(火)〜25日(木)

おんな地獄唄 尺八弁天

1970年(S45)/わたなべぷろ/パートカラー/76分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『おんな地獄唄 尺八弁天』写真

■脚本:日野洸(大和屋竺)/撮影:池田清二
■出演:香取環、国分二郎、青山リマ、武藤周作

女渡世人・弁天の加代の活躍を描いた『男ごろし 極悪弁天』の続篇にして渡辺の代表作。弁天と吉祥天の二つの刺青が互いを引き寄せ、加代とセイガクは運命的な恋に落ちる。渡辺は大和屋竺の脚本に惚れこみ、予算オーバー覚悟で撮影。「ラストカットを撮っていて涙が出てきた。おれはもう一度撮った。『尺八弁天』を撮り終えたくなかったんだよ」。モノクロの暗部やパートカラーの発色が美しい35mmプリントを上映。

★「渡辺護が語る自作解説 弁天の加代を撮る」併映

8月26日(金)〜9月1日(木)

㊙湯の街 夜のひとで

1970年(S45)/わたなべぷろ/パートカラー/73分 ※16mm

『マル秘湯の街 夜のひとで』写真

■脚本:日野洸(大和屋竺)/撮影:池田清二
■出演:大月麗子、吉田純、二階堂浩、港雄一

渡辺護の代表作。温泉街に流れ着いたエロ事師の久生、雀、トリ金の三人。監督の久生はブルーフィルムの傑作を撮ろうとするが……。「ピンク映画でブルーフィルムをつくる話と称して無声映画の時代劇を撮りたかった」。愛する久生と離れ離れになった女優の雀が心身ともにぼろぼろになって早朝の河原にひっそりたたずむラストが切なくも美しい。「ドラマってのは“別れ”だ。別れがあって、時が過ぎていく……」

★「渡辺護が語る自作解説 エロ事師を撮る」併映

9月2日(金)〜4日(日)

日本セックス縦断 東日本篇

1971年(S46)/東京興映/カラー/68分  ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『日本セックス縦断 東日本篇』写真

■脚本:太田康(下田空、小栗康平)/撮影:古川丈夫
■出演:今泉洋、冬木京三、高見由紀、小城かほり

連続暴行殺人犯・大久保清を描いた実録犯罪もの。逮捕の翌月に群馬でクランクイン。連日報道される新たな情報を脚本に書き加えながら撮影は進められた。映画は大ヒット。『週刊読売』7月30日号に「“大久保の実演”をピンク映画にしたスゴイやつら」という記事が載った。「映画はどう撮ったってつながるんだと。このあと、おれの演出、変わったね」。犯行直後、大久保清がぼんやり煙草を吸う空虚な間が不気味。

★「渡辺護が語る自作解説 事件ものを撮る」併映

渡辺護自伝的ドキュメンタリー
第二部「つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史」

2012年(H24)/カラー/全篇138分 ※DVD

■監督:井川耕一郎/撮影:松本岳大/録音:光地拓郎/製作・編集:北岡稔美 ■出演:渡辺護

9月5日(月)〜11日(日)

前篇

65分

『渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第二部「つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史」前篇』写真

渡辺護自伝的ドキュメンタリーの第二部は、撮って飲んで喧嘩してをくりかえすピンク映画のつわものどもの群像喜劇。前篇に登場するのは若松孝二、沖島勲、向井寛、山本晋也、小森白。渡辺は新人監督時代にデビュー作『あばずれ』を超えられないという秘かな悩みがあったことを告白。悪戦苦闘する中、主観カット/客観カット理論が生まれる。「おれは面白い映画が撮れる!っていう自信みたいなものが出てきた」

9月13日(火)〜19日(月)

後篇

73分

『渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第二部「つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史」後篇』写真

第二部の後篇に登場するのは、荒井晴彦、高橋伴明、小水一男、滝田洋二郎。『㊙湯の街 夜のひとで』を撮っていた頃に感じていたことを渡辺が語る。「おれの中にいつか監督ができなくなる……みたいな思いがあった」。活気のある撮影現場を醒めた目で見つめる売れっ子監督。そして80年代半ば、おれの時代は去ったと感じる。それでも、渡辺は言う。「おれの人生の中で一番大きいのはピンク映画時代ですよ」

text by 井川耕一郎

/