4月14日(日)〜16日(火)

にっぽん ぱらだいす

1964年(S39)/松竹大船/白黒/92分 ◯国立映画アーカイブ所蔵作品

『にっぽん ぱらだいす』写真

©1964 松竹株式会社

■脚本:前田陽一/撮影:竹村博/美術:森田郷平/音楽:山本直純
■出演:香山美子、ホキ徳田、加賀まりこ、勝呂誉、水科慶子、益田喜頓、加東大介、長門裕之

この脚本が認められて監督に昇進。終戦から赤線廃止、その十二年間にわたるある遊郭の群像劇。バイタリティ溢れる娼婦たち、その一方に赤線に殉じる純真な女、と人物描写は複眼的。時流に合わせて言動が変わる経営者の息子が秀逸。処女作で傑作を。

4月14日(日)〜20日(土)

ちんころ海女っこ

1965年(S40)/松竹大船/カラー/83分

『ちんころ海女っこ』写真

©1965 松竹株式会社

■原案:富永一朗/脚本:石堂淑朗、前田陽一/撮影:小原治夫/美術:佐藤公信/音楽:山本直純
■出演:中村晃子、ホキ徳田、扇町京子、春川ますみ、南道郎、左卜全

島を日本のハワイにと目論む男たち。それに反対する海女軍団。色と欲がからんでの攻防戦は、当時大島渚組だった石堂脚本と相まって猥雑な面白さが。運動会は市川崑、情事場面はゴダールとパロディ精神も楽しい。新人中村晃子の初々しい肢体が眩しく。

4月14日(日)〜20日(土)

スチャラカ社員

1966年(S41)/松竹/カラー/79分

『スチャラカ社員』写真

©1966 松竹株式会社

■原作:香川登志緒/脚本:若井基成、前田陽一、沢田隆治/撮影:竹村博/美術:今保太郎/音楽:萩原哲晶
■出演:長門勇、ミヤコ蝶々、中田ダイマル、中田ラケット

当時の大人気TV番組の映画化。東宝植木等喜劇と対照的に、こちらは最底辺の会社(社屋が屋上!)で悪戦苦闘の社員たちの姿がコミカルに。にぎやかな関西お笑い芸人たちの顔ぶれも懐かしい。突如はじまる大阪独立国の挿話に前田監督の面目が躍如!

4月14日(日)〜20日(土)

進め!ジャガーズ 敵前上陸

1968年(S43)/松竹/カラー/83分

『進め!ジャガーズ 敵前上陸』写真

©1968 松竹株式会社

■脚本:中原弓彦、前田陽一/撮影:竹村博/美術:佐藤公信/音楽:いずみたく
■出演:ザ・ジャガーズ、中村晃子、尾崎奈々、てんぷくトリオ、南道郎、三遊亭圓楽

ビートルズ『HELP!』をベースにしたナンセンス喜劇。中原弓彦(小林信彦)が脚本協力。007、『第三の男』、レオーネ、ゴダールと映画パロディ満載。後半、突如日本兵の生き残りが登場。途端、戦争映画と化すのに唖然。終幕までお遊び精神横溢。

4月17日(水)〜23日(火)

濡れた逢いびき

1967年(S42)/松竹/白黒/85分

『濡れた逢いびき』写真

©1967 松竹株式会社

■原作:土屋隆夫/脚本:野村芳太郎、吉田剛/撮影:加藤正幸/美術:重田重盛/音楽:山本直純
■出演:加賀まりこ、田辺昭知、谷幹一、山東昭子、大泉滉、左卜全

現・芸能プロダクション会長、この頃ザ・スパイダースのリーダーの田辺昭知の貴重な主演作。相手役は当時お付き合いのあったまりこ嬢。エロティックな田園喜劇と思いきや、次第に毒薬をめぐるサスペンスと化して。さて生き残るのはどっち?のハラハラが。

4月21日(日)〜27日(土)

虹をわたって

1972年(S47)/松竹/カラー/88分

『虹をわたって』写真

©1972 松竹株式会社

■脚本:田波靖男、馬嶋満/撮影:竹村博/美術:佐藤公信/音楽:森岡賢一郎
■出演:天地真理、沢田研二、萩原健一、岸部シロー、日色ともゑ、財津一郎、有島一郎

ダルマ船に起居する労務者たちの中にアイドル真理ちゃんが舞い降りて。「白雪姫」をベースに繰り広げられるメルヘン喜劇と思いきや随所に苦い調味料が。キャプラ的趣向、白馬の王子ジュリーのズッコケぶり、そして日色が真理を背負って歩く場面の鮮烈さ。

4月21日(日)〜27日(土)

喜劇 右むけェ左!

1970年(S45)/渡辺プロダクション/カラー/83分

『喜劇 右むけェ左!』写真

©TOHO CO.,LTD.

■脚本:石松愛弘、高畠久、前田陽一/撮影:梁井潤/美術:小島基司/音楽:山本直純
■出演:堺正章、なべおさみ、井上順之、ザ・タイガース、吉沢京子、犬塚弘

渡辺プロの社長に喜劇センスを見込まれて東宝に。女性下着会社のダメ社員たちが自衛隊に体験入隊。猛訓練を受けるが、全然更生しないのが嬉しい。会社では死んでる部長が入隊した途端、がぜん張り切るのがケッサク。犬塚弘快演!結末はギョギョッ。

4月21日(日)〜27日(土)

次郎長青春篇 つっぱり清水港

1982年(S57)/松竹/カラー/91分

『次郎長青春篇 つっぱり清水港』写真

©1982 松竹株式会社

■脚本:前田陽一、南部英夫/撮影:長沼六男/美術:重田重盛/音楽:田辺信一
■出演:中村雅俊、島田紳助、明石家さんま、佐藤浩市、平田満、原田大二郎、田中好子

今や大物となった男優、お笑い芸人たちの若き日の姿が眼福。次郎長売り出しのこの映画、同時に彼らの売り出し青春篇でもあった。大詰め、三木のり平老親分が一家・系列組の面々を多数引き連れ大喧嘩の現場に到着。さてそれからが、これぞ前田調!

4月24日(水)〜30日(火)

土佐の一本釣り

1980年(S55)/松竹、キティ・フィルム/カラー/91分

『土佐の一本釣り』写真

©1980 松竹株式会社

■原作:青柳裕介/脚本:前田陽一、松原信吾/撮影:長沼六男/美術:重田重盛/音楽:川辺真
■出演:加藤純平、田中好子、蟹江敬三、樹木希林、宍戸錠、加藤武

併映の『寅次郎かもめ歌』のマドンナが伊藤蘭。こちらのヒロインがスーちゃん。キャンディーズ二本立だった。ツッパリ見習い漁師としっかり者の女子高生の初恋に、前田監督は父親的視線を注ぐ。東映からあの方々も登場。途端に画面に緊張が走る。

4月28日(日)〜30日(火)、5月15日(水)〜18日(土)

喜劇 あゝ軍歌

1970年(S45)/松竹/カラー/88分

『喜劇 あゝ軍歌』写真

©1970 松竹株式会社

■原作:早坂暁/脚本:前田陽一、満友敬司/撮影:加藤正幸/美術:芳野尹孝/音楽:大森盛太郎
■出演:フランキー堺、財津一郎、倍賞千恵子、大村崑、北林谷栄

軍歌を愛する前田の本領発揮喜劇。靖国神社で、祀られぬ息子の無念を呟く老婆。兵役逃れのニセ精神病患者。そして終戦記念日に、かの神社の賽銭泥棒を企てるフランキーと仲間たち。軍歌は登場人物の心情を鼓舞し、悲嘆し、息づく。中期の代表作。

text by 北里宇一郎(脚本家)

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