石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲

● 作品解説 / / /

12月25日(水) 〜30日(月)

決着(おとしまえ)

1967年(S42)/東映東京/カラー/88分

『決着(おとしまえ)』写真

©東映

■脚本:石井輝男、内田弘三/撮影:稲田喜一/美術:藤田博/音楽:八木正生
■出演:梅宮辰夫、吉田輝雄、大木実、嵐寛寿郎、谷隼人、河津清三郎、山本麟一、丹波哲郎

浅草の縄張争いをめぐる任侠もので六十年代半ばから「夜の歌謡」シリーズなどでプレイボーイ役が多くなっていた梅宮辰夫を再び硬派で売り出すために企画された作品。そうなれば主役は当然梅宮なのであるが、監督には全くその気がなかったのか兄貴分役の吉田輝雄の見せ場が存分に用意されており、どう見ても吉田が主役にしか見えない。また嵐寛寿郎や大木実といった石井組馴染みの俳優の出番も多く、梅宮は主人公の弟分といった扱いで終わっている。

12月25日(水) 〜30日(月)

ゲンセンカン主人

1993年(H5)/キノシタ映画/カラー/98分

『ゲンセンカン主人』写真

©キノシタ映画

■原作:つげ義春/脚本:石井輝男/撮影:石井浩一/美術:丸山裕司、藤木光次/音楽:鏑木創
■出演:佐野史郎、岡田奈々、中上ちか、横山あきお、水木薫、川崎麻世、杉作J太郎、きたろう

捨てたはずのわたしが今夜わたしをたずねて来るのですーー。『暴力戦士』以来十四年ぶりに劇場映画に復帰した石井輝男が選んだのは『ねじ式』で知られるつげ義春の原作。つげの短篇から「李さん一家」「紅い花」「ゲンセンカン主人」「池袋百点会」の四話をオムニバス形式で構成、石井作品初出演の佐野史郎がつげをモデルにした主人公津部として出演したほか、『暴力戦士』でヒロインを演じた岡田奈々を再び起用、つげ義春自身も特別出演している。

12月28日(土) 〜30日(月)、1月2日(木) 〜4日(土)

暗黒街の顔役 十一人のギャング

1963年(S38)/東映東京/カラー/91分

『暗黒街の顔役 十一人のギャング』写真

©東映

■脚本:石井輝男/撮影:西川庄衛/美術:森幹男/音楽:八木正生
■出演:鶴田浩二、高倉健、丹波哲郎、アイ・ジョージ、梅宮辰夫、江原真二郎、杉浦直樹

工場の従業員の給料五億円の強奪を狙う十一人の男たちとその末路を描いたギャングアクション。『花と嵐とギャング』『恋と太陽とギャング』で東映ギャング映画にモダンな新風を吹き込んだ石井輝男は次々と同系統の作品を発表、本作では東映入社からまだ一年足らずにも関わらずオールスターキャストのお正月映画をも任される存在に。鶴田、高倉、江原ら東映スターだけでなく杉浦直樹、待田京介、アイ・ジョージなど後の石井組で重要な役どころを担う俳優も初参加。

12月28日(土) 〜30日(月)、1月2日(木) 〜4日(土)

監獄人別帳

1970年(S45)/東映京都/カラー/96分

『監獄人別帳』写真

©東映

■脚本:石井輝男、掛札昌裕/撮影:古谷伸/美術:石原昭/音楽:鏑木創
■出演:渡瀬恒彦、伊吹吾郎、佐藤允、嵐寛寿郎、賀川雪絵、内田良平、荒木一郎、尾藤イサオ

渡瀬恒彦の売り出し企画「人別帳」シリーズ第二弾だが、ここでも実質的主役は佐藤允。前作は『網走番外地 望郷篇』がベースであったがこちらは第一作『網走番外地』の焼き直し。しかしギャグ要素も強く異常性愛路線を経てリメイクするとこうなるのかと思わせるものがある。とはいえ雪山でのアクションシーンなどはどう見ても怪我人が出てもおかしくないスリル満点の迫力で、実際に佐藤允は撮影中に骨折を負う事故にあったがそれを押して最後までやり遂げたとのこと。

1月2日(木) 〜7日(火)

決着(おとしまえ)

1968年(S43)/東映東京/カラー/80分 

『続 決着(おとしまえ)』写真

©東映

■脚本:石井輝男、内田弘三/撮影:中島芳男/美術:藤田博/音楽:八木正生
■出演:梅宮辰夫、吉田輝雄、城卓矢、谷隼人、宮園純子、大原麗子、嵐寛寿郎、南原宏治、田崎潤

梅宮辰夫の再売り出し企画の第二弾で「続」とはいっても物語の繋がりはない。梅宮辰夫、吉田輝雄の義兄弟は変わらないものの、ここでもやはり主役は完全に吉田輝雄、なにせタイトルバックすらまるで普通の任侠もののクライマックスのような彼の単身殴り込みの映像なのだ。監督は「梅ちゃんはナンパもののほうがずっと合ってましたね」と回顧しているが、結局梅宮は「夜の歌謡」シリーズのプレイボーイや「不良番長」などのコミカルな路線へ戻っていく。

1月2日(木) 〜7日(火)

明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史

1969年(S44)/東映京都/カラー/92分

『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』写真

©東映

■脚本:石井輝男、掛札昌裕、野波静雄/撮影:わし尾元也/美術:富田治郎/音楽:八木正生
■出演:吉田輝雄、賀川雪絵、由美てる子、藤江リカ、葵三津子、片山由美子、藤木孝、小池朝雄

解剖医の村瀬は自殺した妻の死をきっかけに過去の女の起こした事件の記録を紐解いていく。吉田輝雄の解剖医を狂言回しに五話からなるオムニバス形式の作品で当時まだ存命だった阿部定本人の特別出演も話題になった。阿部定事件の被害者吉蔵役を演じた若杉英二は「阿部定と付き合いたいが良いか」と監督に訊いてきたという。当時既に人気も下火で役にも恵まれなかった若杉はその話題性を利用しての復活を目論んだらしく、監督はその貪欲さに感心したと語っていた。

1月5日(日) 〜7日(火)

女王蜂と大学の竜

1960年(S35)/新東宝/カラー/81分 ○国立映画アーカイブ所蔵作品

『女王蜂と大学の竜』写真

©国際放映

■脚本:内田弘三、石井輝男/撮影:岡田公直/美術:朝生治男/音楽:渡辺宙明
■出演:吉田輝雄、三原葉子、嵐寛寿郎、万里昌代、浅見比呂志、天知茂、沖竜次、扇町京子

三国人同盟と手を組み縄張を乗っ取ろうと企む新興ヤクザに立ち向かう地元組長の一人娘珠美とそれを助ける特攻帰りの“大学の竜”。久保菜穂子主演で二作が作られた「女王蜂」シリーズだが久保の新東宝退社によりこの三作目では三原葉子にバトンタッチ、可愛くも男勝りで粋なヒロインを好演。また、石井監督と戦前からの時代劇スター嵐寛寿郎の初顔合わせとなった作品でもあり、ここから「網走番外地」シリーズの“八人殺しの鬼寅”へと繋がっていく。

1月5日(日) 〜11日(土)

昇り竜 鉄火肌

1969年(S44)/日活/カラー/90分

『昇り竜 鉄火肌』写真

©日活

■脚本:石井輝男/撮影:北泉成/美術:木村威夫/音楽:八木正生
■出演:扇ひろ子、藤竜也、山本陽子、小池朝雄、佐山俊二、安部徹、郷鍈治、高橋英樹、小林旭

新東宝時代からお付き合いのあったベテラン照明マン藤林甲の推薦もあり同じく新東宝に在籍していたこともあるプロデューサー児井英生から日活へ招かれ撮った作品で当時東映の「緋牡丹博徒」シリーズや大映の「女賭博師」シリーズで人気のあった女任侠ものの日活版。主演には人気歌手扇ひろ子が起用された。誰かが銭湯で見かけた尻尾だけの刺青を入れた男の話を聞き、それに着想を得たという六人が背を向け横に並ぶと一匹の竜が完成する刺青のデザインが秀逸。

1月8日(水) 〜11日(土)、15日(水) 〜18日(土)

網走番外地 望郷篇

1965年(S40)/東映東京/カラー/88分

『網走番外地 望郷篇』写真

©東映

■原作:伊藤一/脚本:石井輝男/撮影:稲田喜一/美術:藤田博/音楽:八木正生
■出演:高倉健、嵐寛寿郎、桜町弘子、杉浦直樹、田中邦衛、安部徹、東野英治郎、林田マーガレット

第一作のヒットにより立て続けに作られることになった「番外地」シリーズ、本作はその三作目で舞台はいきなり北海道から長崎へと飛ぶ。その背景には雪のない時期に撮影しなければならないという事情もあったようだ。物語は前二作に比べやや任侠もの寄りで橘がかつて身を寄せていた旭組と新興の安川組との対立が話の軸となるが、安川に雇われながらも橘の男気に惚れる杉浦直樹扮する肺病病みのクールな殺し屋譲次のキャラクターが秀逸、シリーズ最高傑作と評する声も多い。

1月8日(水) 〜14日(火)

ギャング対Gメン 集団金庫破り

1963年(S38)/東映東京/カラー/86分

『ギャング対Gメン 集団金庫破り』写真

©東映

■脚本:村尾昭、石井輝男/撮影:山沢義一/美術:中村修一郎/音楽:八木正生
■出演:鶴田浩二、丹波哲郎、江原真二郎、梅宮辰夫、杉浦直樹、曽根晴美、佐久間良子

二十億の金を白昼堂々狙う金庫破り集団、親友を彼らの仲間に殺された元金庫破りの菊川はその仇を取るため私設Gメンとなって彼らの仲間に潜り込む。公開当時「外国映画からのパクリばかりだ」といった批判もあったようで監督自身も「自然に無意識のうちに出てるのかもしれない」と語っているが、確かにキャラクターの造形や金庫破りの手口なども何かの映画で見たようなと思わせるものはあるものの、軽快なテンポで進む石井演出に身を任せれば気になることではない。

text by 下村健(日本映画研究家・ライター、石井輝男プロダクション)

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