石井輝男 キング・オブ・カルトの猛襲

● 作品解説 / / /

1月8日(水) 〜14日(火)

無頼平野

1995年(H7)/ワイズ出版、M.M.I/カラー/99分

『無頼平野』写真

©1995ワイズ出版

■原作:つげ忠男/脚本:石井輝男/撮影:石井浩一/美術:丸山裕司/音楽:鏑木創
■出演:加勢大周、岡田奈々、佐野史郎、金山一彦、吉田輝雄、由利徹、南原宏治、長谷川待子

サブは黒竜会のボス梶山に狙われた踊り子ナミを助ける。サブにはかつて目撃した黒竜会と一人で対決する無頼漢リュウの姿が強烈な印象を残していた。前作はつげ義春の作品に材を取ったが、続いての本作ではその義春の弟つげ忠男の原作を映画化。演出には新東宝時代に回帰したような趣も見られ、リュウ役には盟友吉田輝雄を二十五年ぶりに起用、また岡田奈々が舞台で歌う曲『ジュテーム』はデビュー作『リングの王者 栄光の世界』で旗照夫が歌った挿入歌であった。

1月12日(日) 〜14日(火)

セクシー地帯(ライン)

1961年(S36)/新東宝/白黒/82分 ○国立映画アーカイブ所蔵作品

『セクシー地帯(ライン)』写真

©国際放映

■脚本:石井輝男/撮影:須藤登/美術:宇寿山武夫/音楽:平岡精二
■出演:吉田輝雄、三原葉子、三条魔子、池内淳子、細川俊夫、沖竜次、鳴門洋二、九重京司

恋人を殺されその容疑者の嫌疑をかけられた吉岡は女スリ真弓と共に事件の裏にあるコールガール組織の秘密に迫っていく。石井輝男監督の新東宝時代の代表シリーズ「ライン(地帯)・シリーズ」の四作目で、隠し撮りを多用した東京の街のスタイリッシュな映像を平岡精二クインテットのヴィブラフォンの音色に乗せクールでお洒落に描き出した逸品で、三原葉子のふりまくコケティッシュな魅力とも相まってファンも多くシリーズの最高作と呼ぶ声もある。

1月12日(日) 〜18日(土)

緋ぢりめん博徒

1972年(S47)/東映京都/カラー/86分

『緋ぢりめん博徒』写真

©東映

■原案:団鬼六/脚本:高田宏治/撮影:赤塚滋/美術:富田治郎/音楽:鏑木創
■出演:中村英子、菅原文太、藤浩子、松平純子、池玲子、土田早苗、堀越光恵、大木実、小池朝雄

渡世の義理から人を斬った鬼百合のお勝は五年の刑期を終え出所、服役中に知り合った江戸幸組の娘お秀を訪ねるが……。引退した藤純子に代わる女優を育てるために「ポスト藤純子を探せ」という企画で作られた作品で中村英子を始め五人の女優の共演作となったが残念ながらそこから藤純子を継ぐスターは生まれなかった。石井輝男はこの作品について「ちょっと上手くいかなかったんだよね、でも僕は好きなんだよ、出来の悪い子ほど可愛いというかね」と語っていた。

1月15日(水) 〜21日(火)

顔役

1965年(S40)/東映東京/カラー/91分

『顔役』写真

©東映

■脚本:笠原和夫、深作欣二、石井輝男/撮影:星島一郎/美術:中村修一郎/音楽:八木正生
■出演:鶴田浩二、高倉健、アイ・ジョージ、江原真二郎、大木実、佐久間良子、長門裕之、天知茂

産業地の埋め立ての利権と東京進出を狙う関西組織とそれを阻止しようとする関東組織の抗争を描いたギャングもの。鶴田浩二、高倉健の二大スター共演に佐久間良子、三田佳子、藤純子など女優陣も揃うお正月映画。元々この作品は深作欣二が監督する予定であったが諸事情で降板、石井輝男にバトンタッチされた。劇中高倉健が口笛で吹くメロディは監督がたまたま見たドキュメンタリーでヤクザが歌っていた曲とのことだが、これが次作『網走番外地』のあの主題歌となる。

1月15日(水) 〜21日(火)

盲獣VS一寸法師

2001年(H13)/石井輝男プロダクション/カラー/95分

『盲獣VS一寸法師』写真

©石井輝男プロダクション

■原作:江戸川乱歩/脚本・撮影:石井輝男/美術:鈴屋港、八木孝道/音楽:藤野智香
■出演:リリー・フランキー、塚本晋也、平山久能、リトル・フランキー、橋本麗香、丹波哲郎

浅草レビュウのスター蘭子の舞台を見にいった三文小説家小林紋三は隣に座る不気味な男が気になった。その帰り道紋三は女の腕を抱えた一寸法師を目撃する。江戸川乱歩の『盲獣』『一寸法師』ほかをミックスした物語でこれが石井輝男の遺作となった。今や映画やドラマに引っ張りだこの俳優リリー・フランキーはこの作品でデビュー。本作はデジタルビデオで撮影、公開されたが、今回の上映はイタリアのラボでキネコを行い、カラー調整をした35mmプリント版。

1月19日(日) 〜25日(土)

徳川いれずみ師 責め地獄

1969年(S44)/東映京都/カラー/95分

『徳川いれずみ師 責め地獄』写真

©東映

■脚本:石井輝男、掛札昌裕/撮影:わし尾元也/美術:雨森義允/音楽:八木正生
■出演:吉田輝雄、小池朝雄、橘ますみ、片山由美子、賀川雪絵、尾花ミキ、芦屋雁之助、林真一郎

エログロ路線に反撥した京都撮影所の一部の俳優や助監督たちから石井監督の排斥運動まで起こる中製作された異常性愛路線第六作。当時石井組の撮影の厳しさに耐えかねた主演予定の女優が逃亡したとのニュースも流れたが、代わって主演した片山由美子によればこれは話題作りのため宣伝部がでっち上げたものだったという。劇中には刺青をした多数の女優が登場するが、撮影所の絵師だけではとても間に合わず大阪の美術学校の生徒を動員し自由に描かせたそうだ。

1月19日(日) 〜25日(土)

やさぐれ姐御伝 総括リンチ

1973年(S48)/東映京都/カラー/86分

『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』写真

©東映

■脚本:掛札昌裕、関本郁夫、石井輝男/撮影:わし尾元也/美術:雨森義允/音楽:鏑木創
■出演:池玲子、愛川まこと、内田良平、嵐寛寿郎、遠藤辰雄、安部徹、名和宏、林真一郎

鈴木則文監督『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』に続く梵天太郎原作「姐御伝」シリーズの二作目だが物語に繋がりはない。タイトルバックに描かれる池玲子のオールヌードによるケレン味あふれる殺陣から見るものを一気に惹きつける快作。原作者の梵天太郎が特別出演しているほか、後にロマンポルノのミューズとなる芹明香が本作でデビューしているが石井監督にとってはあまり印象に残らなかったようで後年そのことを訊いても全く憶えていなかった。

1月22日(水) 〜25日(土)

直撃地獄拳 大逆転

1974年(S49)/東映東京/カラー/86分

『直撃地獄拳 大逆転』写真

©東映

■脚本:石井輝男、橋本新一/撮影:出先哲也/美術:藤田博/音楽:鏑木創
■出演:千葉真一、志穂美悦子、池部良、丹波哲郎、佐藤允、山城新伍、郷鍈治、中島ゆたか

空手映画ブームの最中石井輝男にも千葉真一で一本撮って欲しいと依頼が来る。しかし空手映画があまり好きではなかった監督が「もう懲りて回って来ないように」とギャグをてんこ盛りにしたコメディアクションに仕立て上げたのが『直撃!地獄拳』であった。ところがこれが思わぬ好評を得、続篇の本作はお正月映画として封切られることになる。本作ではギャグ度も倍増、小学生レベルといって良い程の低レベルなギャグが臆面もなく繰り出され場内爆笑必至のカルト作。

text by 下村健(日本映画研究家・ライター、石井輝男プロダクション)

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