10月14日(水) 〜20日(火)

右門捕物帖 緋鹿の子異変
(改題版『嵐寛寿郎.金語楼捕物帖 謎の必殺劍』での上映)

1952年(S27)/新東宝、綜芸プロ/白黒/85分 ※16mm

『右門捕物帖 緋鹿の子異変』写真

©国際放映

■原作:佐々木味津三/脚色:長島冨三郎/潤色:鏡二郎/撮影:河崎喜久三/美術:梶由造/音楽:鈴木静一/助監督:曲谷守平
■出演:嵐寛壽郎、山根壽子、柳家金語樓、水島道太郎、伊藤雄之助、利根はる恵、小倉繁

正月の猿若座、「明烏夢泡雪」上演中に女形の嵐鯉紅が突如絶命。その背後には山に棲む人々の姿が…。『片眼狼』の翌年に撮られた中川版むっつり右門第2弾は正調推理時代劇。潤色の鏡二郎とはマキノ出身の並木鏡太郎監督の別名。

10月14日(水) 〜20日(火)

女死刑囚の脱獄

1960年(S35)/新東宝/白黒/78分 ※16mm

『女死刑囚の脱獄』写真

©国際放映

■脚本:石川義寛/撮影:吉田重業/美術:黒沢治安/音楽:松村禎三/助監督:石川義寛
■出演:高倉みゆき、寺島達夫、沼田曜一、和田桂之助、三田泰子、若杉嘉津子、宮田文子、浜野桂子、杉山弘太郎、菊地双三郎、林寛

父親殺しの濡れ衣で死刑宣告された京子は、真犯人を探すべく盛岡刑務所を脱走する。白黒画面ならではの緊張感を引き立てる音楽の効果、セットの見事さ、俯瞰のスタイル。法と人間のはざまで突っ走る警部を沼田曜一が好演している。

10月18日(日) 〜20日(火)

憲兵と幽霊

1958年(S33)/新東宝/白黒/75分 ◯東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『憲兵と幽霊』写真

©国際放映

■脚本:石川義寛/撮影:西本正/美術:黒沢治安/音楽:江口夜詩/助監督:石川義寛
■出演:中山昭二、久保菜穂子、天知茂、中村彰、三原葉子、宮田文子、芝田新、三村俊夫、國創典、高松政雄、万里昌代、胡美芳

己の欲望のままに売国、殺人、凌辱と悪事を重ねる波島憲兵中尉。やがて漢口に赴任した彼の前に…。戦中・戦後は一貫して戦争映画を撮らなかった中川信夫が、唯一太平洋戦争の時代に材を採り、権力と人間の良心を問うスリラーの佳篇。

10月18日(日) 〜24日(土)

怪異談 生きてゐる小平次

1982年(S57)/磯田事務所、ATG/カラー/78分

『怪異談 生きてゐる小平次』写真

©1982 磯田事務所/ATG

■原作:鈴木泉三郎/脚本:中川信夫/撮影:樋口伊喜夫/美術:西岡善信、加門良一/照明:小中健二郎、花田勝麿/三味線・唄:岡本宮ふじ/助監督:鈴木健介/題字:天知茂
■出演:藤間文彦、宮下順子、石橋正次

太九郎の妻おちかへの想いを断ち切れぬ小平次。幼馴染の三人が、いろはにほへとを書きまする。夭折した鈴木泉三郎の絶筆戯曲を監督の手でシナリオ化した、13年ぶりの本篇にして遺作。企画には莫逆の友・滝沢一(映画評論家)が名を連ねた。

10月21日(水) 〜24日(土)

番場の忠太郎

1955年(S30)/新東宝/白黒/86分 ※16mm

『番場の忠太郎』写真

©国際放映

■原作:長谷川伸/脚本:三村伸太郎/撮影:岡戸嘉外/美術:伊藤壽一/音楽:清瀬保二/助監督:柴田吉太郎
■出演:若山富三郎、桂木洋子、森繁久彌、山田五十鈴、鳥羽陽之助、阿部九州男、伊澤一郎、三井弘次、滝花久子

我ときて遊べや親のねぇ雀──ご存知長谷川伸「瞼の母」の映画化。豪華キャストを得て、中川演出は独自の境地を拓いている。子守唄、御詠歌、まつり囃子、そして森繁節の纏綿たる情緒。耳を澄まして観たい、ロケも美事な股旅映画の名作。

9月23日(水) 〜27日(日)、29日(火)

【参考上映】
『御用唄鼠小僧』撮影風景

◯早稲田大学演劇博物館所蔵
所蔵タイトル「鼠小僧・御用唄(昭和十年八月十七日)」
1935年(S10)/白黒/無声/3分37秒/ダブル8→DVD

右太プロ『御用唄鼠小僧』(撮影・玉井正夫)は監督昇進後3本目の中川作品。中川信夫と評論家の滝沢一が「猿澤丈介」の共同ペンネームでシナリオを執筆した。作品は残存しないが、8月中旬の志摩・渡鹿野島でのロケ風景が右太衛門旧蔵8ミリにあった。右太プロ一党はじめ、松竹下加茂から応援出演した花岡菊子らの姿も見える。
※個人フィルムのため、ロケ風景以外の映像も含まれています。ご了承ください。

10月18日(日) 〜24日(土)

【参考上映】
『東海の顔役』撮影風景

◯早稲田大学演劇博物館所蔵
所蔵タイトル「東海の顔役(昭和十年二月)」
1935年(S10)/白黒/無声/4分14秒/ダブル8→DVD

奈良・あやめ池に撮影所を置く市川右太衛門プロダクションで、中川信夫は正式に監督に昇進。その1作目が次郎長物の『東海の顔役』だった。撮影・玉井正夫、主題歌・東海林太郎「旅笠道中」。やはり作品は残存しないが、右太衛門旧蔵の8ミリに2月のロケの様子が残されている。右太衛門、白石明子ほか中川監督も登場。
※個人フィルムのため、ロケ風景以外の映像も含まれています。ご了承ください。

text by 長谷川康志(酒豆忌実行委員)